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まっしろな勝負    紅宮 隆星



今日は授業中に雪が降りました。
僕たちは、先生の話なんて耳に入らないくらいわくわくしました。
授業が終わるときに、僕らは先生に「次の体育は雪合戦がいい」と発案してみました。
先生も「今しかできないことだからね」と賛成してくださいました。

体育の時間は僕らにとって特別の授業でした。
座って聞いて、答えるだけの授業とは違い、僕らの考えや行動で面白くもつまらなくもなります。
僕らは二つの班に分かれ、紅白帽をかぶりなおす暇も惜しんで壁と雪玉を作りました。
「前衛と後衛に分かれて作戦を立てるほうが面白くなるよ」と先生が教えて下さったので、それぞれの班で作戦を立てる時間が作られました。
僕らの班には野球部の近藤君と金田君がいるので、作ったら主に近藤君のところに持っていく作戦を取りました。
完璧な作戦だと思いましたが、相手の班にも少年野球の倶楽部に入っている菅井君と中村君がいるので油断はできません。
寒いところから来た前田君が、小さい雪玉を固めていっぱい作るといいと教えてくれたので、僕らは一生懸命固めました。
雪玉をたくさん作りましたが、相手の班の避球と籠球が得意な神林君が跳躍して壁を越えた球を投げてくるので、僕らはとても苦戦しました。
大将、と呼ばれてる水木君が、一番背が高くて大きいので盾になってくれました。
普段は少し怖いと思っていましたが、とても頼もしく見えましたので、僕らはそれに報いようとたくさんの雪玉を作ったり投げたりしました。
勝ちも負けも関係なく、僕らは夢中で楽しみました。
授業が終わってから気付いたのですが、僕らは勝ち負けのつけ方も考えずに必死で楽しんでいました。

終業の鐘が鳴り、僕らは名残り惜しく思いながら雪合戦を終えました。
「皆汗びっしょりだね」
と上着を着こんで見ていた先生が言うので、僕らは
「次は先生も一緒に楽しみましょう」
と返しました。
水木君が「先生の入る班は入らない班に5人くらい渡せよ」と楽しそうに言っていました。
僕は口にはしませんでしたが、先生は大人だし、大人が入るならそれはいい考えだと思いました。
次に雪が降る日が、いつもより楽しみです。


※避球…ドッジボール
※籠球…バスケットボール


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